Blog「星の光」

(2024年12月14日)

No.10  古代文字「食」と短歌(2)

「この人の手でザクザク斬られる 里芋ごぼうネギの喜び」(Hoshi no Hikari)

母は典型的な昭和の女性でした。

古い日本家屋の、冷たく薄暗い土間のお台所で、毎日明るく家族が囲む食卓を整えてくれました。

私が実家を離れて一人暮らしを始めてからは、お惣菜をたくさん作ってはクール宅急便で送ってくれました。
豚汁や肉じゃが、かぼちゃスープも密閉容器に入れて。
母の手作りコロッケは絶品で、どんなお店の揚げたてコロッケよりも心が満たされました。

幼少期の私は、片時も母の側を離れませんでした。
炊事の間中、母のエプロンの裾を掴んで、母がカマドと流し台を行ったり来たり右左に動くたびに、私も離れまいとピッタリくっついて動いていました。

小さいころは流し台まで背丈が足りず、まな板も見えていませんでしたけれど、お野菜を刻む音や、グツグツ、かたかた、お鍋と蒸気が奏でる美味しそうな音と、母の動きのリズムとで、お料理を学んだような気がしています。

母の手にかかって調理され、喜ぶお野菜たちの明るい声は、今も私の大切な音の記憶です。

古代文字の「食」「き」という食べ物を盛る器に蓋をした形。

母が送ってくれた手作りコロッケ
(「パパも手伝いました」と父のメモが入ってました。)

幸せのクール宅急便、母の手作りパンとお惣菜