Blog「星の光」

(2024年12月15日)

No.12 古代文字「花」と短歌(3)

「黄色が揺れる菜の花 山手線  初めましてとささやくように」(Hoshi no Hikari)

数十年も前のことですが、
進学のために上京した初日、やはり初めてひとりで乗車した山手線。
その中から見た線路沿いの黄色い菜の花。確か、新大久保か高田馬場あたり。

自分で自分の不安な心を鎮めるかのように、自然に出てきた言葉、東京で初めて詠んだ歌です。

当時、私は浪人生でした。
新入学を控えて意気揚々と上京してきたフレッシュな若者たちと違って、私のこれからはきっと辛いであろう浪人生活。その先に合格できるかどうかもわからない不安と、右も左も分からない初めての街に放り出されたような不安。
息が止まるギリギリの緊張感を抱えて、山手線の車内のドアの前で、吊り革にも触れずに両足で踏ん張って立っていました。
ふと車窓の線路沿いの土手に、黄色い菜の花がたくさん揺れているのに気がつきました。
田舎では当たり前の眺めも、東京の街中では優しく心に響いてきます。

菜の花が風に揺れるたびに、黄色い明るさと、先行き不安定な注意信号の黄色とが、混じり合うように滲んで、涙が出そうになったのを今でも覚えています。

おかげさまで、その後、浪人生活は身を結び、桜咲く春を迎えたのでした。

古代文字「花」

「花」は、「化」を声符とする形声字。「華」を形声化した略字。
「華」は下の部分が「華」の象形。白川静『字統』によれば、「漢魏以前にはその字がなく、北魏の太武帝の始光2年(425年)、新字千余を作ったことがあり、そのときのものであろうと思われる」。

新宿御苑の満開の桜

新宿御苑 5月のバラ園

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