Blog「星の光」

(2025年1月30日)

No.54 古代文字「叶」と志叶う結び目(「結ぶ」その2)

今回は日本らしさが溢れる「結び目」についてです。

現代の「結」という文字の意味を少し調べただけでも複数の意味(むすぶ・終える・実を結ぶ・組み立てる など)が上がってきます。
さらに「結」が言葉になったり熟語になったりすると、また多様な意味あいが広がっていきます。

先日は、古代文字「結」のBlog.No.51の中で、「結ぶ」という言葉が大切にされてきた背景について雑感を書きましたが、今日は縁起が良いとされる「結び目」、「叶結び」(かのうむすび)を紹介したいと思います。

色々なところで目にしていると思いますが、「叶結び」(かのうむすび)とは、結び目を表から見ると口の形に見え、裏から見ると十字の形に見える結び方です。
口と十で叶、ということで、叶結び、願い事が叶う縁起の良い結び方と言われています。
結びの形はさまざまなものがありますが、この特徴を含むもの全般を広く叶結びます。例えば、「二重叶結び」はお守りの口を閉じるのによく使われる結び方で、やはり願い事が叶うという意味のある、 古くから伝えられた縁起のいい結び方とされています。

左のお守りは「二重叶結び」の正面で「口」、右の浮玉のお守りは結び目の裏側が「十」に見えます。

お守りには、結び方だけでなく、「叶」という文字が織り込まれているものもあります。
ということで、古代文字は「叶」です。

ですが・・・ここまできて、古代文字「叶」の字源をいつもの『字統』で調べてみると、形声字で「正字は協(きょう)で劦(きょう)声」叶は協の略体としての十を声とする」と書かれています。そして「六朝以前には叶の確かな用例はないようである」とのこと。
そして、白川先生は、古文で十口の一致するところを叶とするのは俗説であろうと述べています。

少し、あらら、、、って感じもします。
文字は用例によって異なるニュアンスを醸し出しますし、熟語にしたときに新たに意味を帯びてきますし、文字が使われる長い年月の間にさまざまな変化もあり、わからないことも山のように当然あるわけです。字源を辿ると思いがけないスピリチュアルな素敵な意味に出会うことも多い一方、意外にドライな字源ももちろん多くて面白いです。
たとえば、「白」という文字は、多くの人が純粋なイメージを抱きがちですが、字源は頭蓋骨の象形です。
よく考えてみれば、何千年も昔、だだっ広く赤茶色の中国の大地で、白いものといえばドクロ、頭蓋骨くらいなものだったのかもしれません。

わからないことが多い古代文字「叶」ですが、結び目を「叶」という漢字に見立てて、祈願成就の象徴のように大切にして、そういう見立てを人々が受け継いできたことがとても日本らしいと感じますし、大切な何かを叶結びで結べると良いなと思います。
結ぶという機能を果たす以上の、ささやかなことに意味を込める積み重ねが日本の繊細な美しさの形の一つなのでしょうね✨

古代文字「叶」

昨年の春、イトコ(写真左の新郎)が神戸で結婚式🕊️を挙げました。
このイトコのお母さんと私の母は双子で、他のイトコたちとはやっぱり違う存在感。
イトコの新婦さんが手に持っているのは、なんと!!20年以上前、私がイトコにプレゼントした作品「志叶」。

「志叶」という文字は、「志」が将来「叶う」ようにとのリクエストの文字でした。
すっかり忘れていた作品の額が、披露宴のクライマックスに登場してビックリ。
披露宴の会場でイトコは、私が、古代文字をやっていることを紹介しつつ、すべての人の志が叶いますようにと、「志叶」という言葉への想いを心を込めてみんなに贈って、最後に私に「次は〇〇ちゃんが幸せになる番!」と優しいイトコ。

お嫁さんも、やっぱりイトコが選んだ、控えめで我欲のない素敵な人でしたが、自分たちの披露宴を、周囲の人々に感謝を伝える場にしていたイトコたちが素敵でした。

そして、やっぱり文字の力ってありがたいなと思いました。
20年以上も前ですが、心を込めて書いた文字が、こんな風に多くの人に意味と価値を伝える素材にしてもらって、そして自分自身のところにも里帰り!?してくれた「志叶」という文字。
本当に、私の願いも叶うかもと思わせてもらえて感謝、私にも晴れの日でした。
いつまでもお幸せに👏

羽が幸の象徴ってわけではないけど、道端で見つけたこんな小さな鳩の羽で喜べる日々に感謝✨

最後に付録!?
「結」の現代の意味は、
「ウィクショナリー日本語版」には「結」の意義を「むすぶ」として、「むすぶ」には、1.「つなげる」(結合)(聯結れんけつ=連結)と、2.「おえる」「終わりにする」(結果)(結束)(結論)(完結)(終結)をあげています。
https://ja.wiktionary.org/wiki/%E7%B5%90

一方、「漢字ぺディア」では「意味」として次のように掲載されています。
ケツ・ケチ
①むすびつける。ゆわえる。つなぐ。たばねる。「結合」「結束」「団結」
②実をむすぶ。しめくくる。まっとうする。「結実」「結果」「結末」
③かまえる。組み立てる。「結構」
④漢詩で、絶句の第四句。結句。「起承転結」
ケイ もとどり。髪を頭上で束ねたもの。
https://www.kanjipedia.jp/kanji/0001871100

また、「ゆい」と読んで、日本の主に小さな集落などにおける共同作業の制度を「結」と言います。
一人では困難な作業を、集落の住民総出で助け合う相互扶助のことです。

結び目についての参考サイト
「水引ライナー」というウェブサイトの「むすび目百科事典」https://mizuhikiliner.com/square-cross-knot/