





甲骨文字「玉」
『字統』にはいくつもの古代文字の「玉」が掲載されていましたが、こちらはその中の一つ、甲骨文字の「玉」です。玉を紐で貫いた象形。「玉」は美しい石のこと。
白川先生は、「玉」は後漢代の字書『説文解字』には「石の美なるもの、五徳あり」として、玉の五徳を仁・義・智・勇・絜にあてている例が書物にあると紹介しています。しかし、「玉」はそのような倫理的な比喩の意味で尊ばれたのではなく、むしろ魂そのもの、生命力の根源にかかわるものとして、古代人の信仰の対象であり、のち多くの礼器として用いられた、と説いています。日本でもすでに縄文中期の頃には、玉人や玉作りたちが玉制作の技術を持っていたということです。
これまで、昨年出会えた素敵な幾つかの石の思い出を書きましたが、今回紹介する「二見興玉神社」の霊石「興玉神石」は今年出会ったNo.1🎉の石です。興玉大神(おきたまのおおかみ)すなわち、猿田彦大神がご出現になったと伝えられ、二見興玉神社に祀られています。
この霊石に出会った、といっても、今年初めて出会ったわけではなく、実は子供の頃から何度も目にしていたのに、その石が霊石であることには全く気がついていなかったのです。
なんとも恥ずかしい話ですが、先日思いがけず二見浦を訪れて、私の中の断片的だった古事記の知識と、神宮や別宮、それぞれにお祀りされている神々、そして以前から大好きでこのBlogでも度々話題にしてきた猿田彦大神のことが一つにつながりました。
そしてあらためて、二見浦の禊の浜や二見興玉神社、夫婦岩などを眺めてみると、もはや別物!!
浜辺の景色や社殿やいくつもの巌が、語りかけてくるかのようでした。
意味を知るということは、そこにある物との対話の始まりなのだと思いました。
そんなわけで、出会い直しというのか…
今頃になって、私の目がやっと開けて、今まで出会っていたあなたが私の特別なアナタだったのですね…!!という感じ。
ちょっとドラマチックに心の中を禊の風が吹き抜けました。
と、また、長すぎる前置きでしたが、
「二見興玉神社」には猿田彦大神と宇迦御魂大神(うがのみたまのおおかみ)の二柱とともに、霊石「興玉神石」が祀られています。
垂仁天皇の皇女倭姫命(やまとひめのみこと)は、「御杖代(みつえしろ)」として天照大神に奉仕し、天照大神から教えを受けました。のちに天照大御神の御魂を鎮座する処を探して、大和から伊勢まで歩かれたそうです。倭姫命が天照皇大神の神霊を奉載して二見浦に船を停めたところ、この霊石から猿田彦大神がご出現になったと伝えられています。
それから倭姫命は皇大神宮の地を五十鈴川の辺りにお定めになりました。
このような謂れから、「常世の神」たちが最初に降り立つ場所と言われているのがこの霊石「興玉神石」です。
そして、「夫婦岩」と呼ばれている二つの岩「天の岩門」を鳥居に見立て、この霊石がお祀りされたということです。
右に少しだけ写っているのが「二見興玉神社」です
通称「夫婦岩」と呼ばれている「天の岩門」
鳥居に見立てた夫婦岩が二見興玉神社の門石です。
6月の夏至を中心に5・6・7の3ヶ月間の間は、夫婦岩の間から昇る美しい朝日が拝めます。
二見興玉神社の公式サイトによれば、「天の岩門」の「大岩は正式には立岩と呼ばれ、高さ9m、周囲は44mで古生層の最下部である輝光石と緑泥片石からなり、小岩は根尻岩と呼ばれ高さ4m、周囲10mで方解石からなり、大小の男岩と夫岩の間に張り巡らされた大注連縄の長さは35mあります。大岩・小岩を結ぶ大注連縄は「結界の縄」と称され、夫婦岩の向こうを海の彼方にある「常世の国」からの常世神を始め神々が最初に下界に寄りつく聖なる場所とされてまいりました」ということです。
この「天の岩門」、鳥居に見立てた夫婦岩のから800mくらいのところに、猿田彦大神が出現された「興玉神石」があります。以前は、「興玉神石」が海面から顔を出しているのが見えていましたが、海面が上昇し今では見えなくなったそうです。
現在では、毎年4月頃の大潮の時に、うっすらと無垢鹽草(お祓いに使う「むくしおくさ」→写真下)が岩礁に繁茂した興玉神石を拝せるときがあるということです。
昨日のBlogにも書きましたが、二見浦は禊の霊場で、ここで身を清め、ケガレを祓って神宮にお参りするのが古くからの吉例となっています。二見興玉神社では、伝統的に禊ぎに代わって、この岩礁に繁茂する無垢鹽の祓を行っていますが、直接祓いを受けられない人のためにこの霊草をわけてくださいます。
浴湯に入れ、または身につけて、不浄祓いとしたり、この霊草をしめ縄に付け、門口の不浄を祓い、また田畑の畦に立て害虫の災いを防ぐのに用います。(写真下の無垢鹽草の包みの裏面に、この説明が書かれています。)
「二見蛙」
お金が帰る、無事帰る・若返る🐸などのご利益✨
二見興玉神社には、授与品として、お財布に入れる蛙や、蛙の根付け、蛙の陶器の置物などがたくさんあります。
私の実家には、昔から玄関に陶器の大きな蛙の置物が置いてあって、どうしてこんなところにこんな置物が…とずっと思っていたのですが、同じ蛙が二見興玉神社にいました!
というわけで、
伊勢二見浦の「禊ぎ浜」に続く、天の岩門「夫婦岩」、霊石「興玉神石」、これら一帯が、神々の世界と人間の世界との結界というか、それぞれの世界への結節点、入り口のようにも感じられました。
普通の日常生活の空間のあちこちに、いつでも神々の世界への出入り口がある、それが伊勢まちの魅力の一つ。
二見の霊石は、その正面玄関みたいなところかも…⛩️
・二見興玉神社についての情報源
二見興玉神社公式サイトhttps://futamiokitamajinja.or.jp/
・伊勢志摩国立公園についての情報源
環境省公式サイト https://www.env.go.jp/nature/nationalparks/list/ise-shima/